研究概要 |
1.胆道系における発癌に関する臨床病理学的研究 胆道系発癌において重要な因子と考えられている腸上皮化生と膵胆管合流異常との関係について病理学的な検討を行った。 光顕的検索については検索対象は胆嚢癌25(内合流異常7),胆管癌35(内合流異常7),胆嚢炎175(内合流異常5),正常胆嚢20,小児總胆管拡張症9等である。組織化学的染色法の内、Best's carmineはpaneth cellの判別の爲に極めて有効である事を示した。結論をまとめてみると、 (ア)加令と共に粘膜化生率は上昇する。(イ)合流異常をもつ症例には化生が多く又つよく見られた。(ウ)粘膜上皮化生(+)群には分化型腺癌が多く、化生(-)群には未分化腺癌が多く見られた。(エ)合流異常は化生と関係があり、化生は癌と特に組織型を限定して、つよい関係がある。但し、合流異常と発癌との直接の有意の関係については、未だ証明出来るに至っていない。 2.犬モデルにおける長期生存後の胆道系の変化 合流異常モデル作成後長期観察を続けている。(成犬44頭) 胆嚢粘膜上皮化生は、2年を経るとつよくなる。これを組織化学的,電顕的に裏づけた。しかし膵蛋白分解酵素活性との関係については未だ証明は終らない。4年6ケ月迄の経過で、組織異型には至ったが、細胞異型,発癌に至ったものは全くなかった。 3.胆汁内膵酵素活性化の要因であるエンテロキナーゼの検出 エンテロキナーゼモノクロナール抗体の作成 Key enzymeであるエンテロキナーゼの微量測定なくしては、障害因子としての膵酵素活性の本態にはせまれない。この解決策として、モノクロナール抗体の作成をめざし、2種類の抗体を作成した。抗体産生の良否について現在検討を続けている。
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