研究概要 |
1)顎関節関節円板の形態とその機能構造に関する研究-各種モデル動物の顎関節関節円板についての組織化学的ならびに免疫組織化学的研究を行い, 関節円板の基質に各種のムコ多糖体の局在を証明し, よって関節円板の線組軟骨としての機能構造の一端を明らかにした. また坑コラーゲン坑体を用した免疫組織化学的検索を行い, 実験的負荷によって関節円板への毛細血管の侵入を認める所見を得, 今後の病態検索の手ががりとした. ヒト顎関節関節円板の組織化学的研究を, 新鮮遺体標本を対照として検索し, ムコ多糖体の関節円板への局在を証明し, 病態検索への基礎的基準を確立した. 2)顎関節の関節鏡学的研究-ヒト遺体標本を用いて関節鏡解剖学的研究, さらに画像解析解剖学的研究を行い, これらのデータを基礎に, 臨床症例に実施した関節鏡視を検討して顎関節の関節鏡診断学の確立を計った. 3)顎関節の関節円板の機能と病態-関節円板病態の解剖学的研究を剖検標本に実施し, その形態学検索に加え, 顎関節内障症例の関節鏡的検索, 手術摘出標本からの関節円板病態の組織学的および組織化学的検索を行った. その結果, クローズドロックの発現には滑膜の炎症, 関節面表層のFibrilla-tionが病態形成に関与し, すくなからず関節内の癒着乃至は前癒着病態とも呼ぶべき病態が大きな役割を有していることが明らかになった. また組織学的検索では関節内のムコ多糖体の局在が病態に応じ差異のあること, 坑コラーゲン坑体を用いた検索で関節円板内部に毛細血管の侵入が認められること, また関節円板後部組織に炎 性変化と退行性変化が症例毎に見い出され, その症例の予後に関わっていることが示唆された. 関節円板病態の診断については関節造影, 関節鏡, MRIなどの総合診断の有用性と高度の鑑別診断の的確性について実証し得た.
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