研究概要 |
カルシウム(Ca)細胞機能調節に対するカドミウム(Cd)の干渉作用の可能性を明らかにするためCaの細胞機能調節において重要な役割を担っている。calmodulin依存性、あるいはcalmodulin非依存性のCa依存性酵素に対するCdの影響および細胞内Ca濃度調節系に対するCdの作用について検討し以下の結果を得た。 1 豚脳よりcalmodulinを精製し、Ca-calmodulin依存性cAMP-phosphodiesterase(cAMP-PDE)の生理活性に対するCdの作用を検討した結果、(1)CdはCaの生理的濃度に相当する【10^(-6)】〜【10^(-5)】Mの範囲でCaに代って本酵素を活性化する。(2)このCdによる活性化はCdがcalmodulinに結合し、Caと同様の立体構造変化をひきおこすことによる。(3)CdによるcAMP-PDEの活性化は、他の金属イオン(Mn,Hg,Zn,Cr,Sr及びBa)より低濃度域で顕著に生ずる。 2 calmodulin非依存性のCa依存性myosinATPase及びactomyosinATPaseの酵素活性に対するCdの影響を検討した結果、CdはCaに代って両酵素活性を増大させ、一定濃度範囲では完全にCaと同程度の活性化効果を示した。 3 Ca輸送能力を有する筋小胞体を兎骨格筋より調製し、Ca輸送に対するCdの影響を検討した結果、(1)CdはCa-ATPaseによるATP依存性のCa輸送を3X【10^(-6)】M以上の濃度で抑制する(50%抑制濃度は約【10^(-5)】M).(2)【10^(-5)】M及び5×【10^(-5)】MのCd添加によりCaの輸送は拮抗的に抑制された。(3)Ca-ATPaseはcAMP-PDE及びmyosinATPaseの場合と同様、【10^(-6)】M〜5×【10^(-5)】MのCdにより活性化された。(3)Ca-ATPaseによるCaの輸送において必須のステップであるリン酸化酵素(EP)の生成は、【10^(-5)】MまでのCdにより影響されなかった。以上の結果より、CdはCa依存性酵素をCaに代って効率よく活性化する一方Ca-ATPaseによるCa輸送を顕著に抑制することが明らかになった。この様にCaの細胞機能調節において中心的な位置を占めるCa依存性生理活性に対するCdの干渉は、きわめて重大な生理的意義を有すると結論される。
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