解糖系律速酵素のピルビン酸キナーゼのL型アイソザイムmRNA量は糖尿病ラット肝において、インスリン及び食餌性フルクトースにより著明に増加する。その機構を検討した結果、インスリンは末知の蛋白質の合成を必要とする機構で遺伝子の転写を促進することが明らかになった。一方、フルクトースは核内のmRNA前駆体を安定化することで誘導効果を示すと考えられた。このフルクトース作用はホルモンを介さない肝臓に対する直接作用であることが示唆された。インスリンやフルクトースの作用をさらに解析するためには遺伝子の構造を必要る必要があるが、L型はR型と同じ遺伝子に由来することが示唆されている。そこで、R型のcDNAクローンを単離して、その塩基配列をL型と比較すると共に、遺伝子のクローンを単離して構造解析を行った。その結果、R型cDNAの塩基配列は【5^1】端部分を除いてL型と同一であることが明らかになった。すなわち、R型の翻訳配列はL型より93塩基【5^1】側に余分に伸びていた。遺伝子は12個のエクソンから構成されていて、上記のR型とL型に固有の配列はそれぞれエクソン1とエクソン2にコードされており、エクソン3から下流のエクソンは両型に共通であった。L型固有のエクソンの上流25塩基付近にはTATAボックスがみいだされ、プライマー伸長法によりL型の転写開始点を同定した。R型の転写開始点はまだ同定していないが、これらの結果からR型とL型のmRNAは異なるプロモーターを使って生成されるものと考えられる。ホルモン反応性を有する領域が一般に遺伝子の【5^1】上流に存在することが報告されているが、L型の転写開始点上流にはR型固有のエクソンがあり、R型はインスリンに反応しないことが報告されているので、R型固有のエクソンまでの【5^1】上流にインスリン反応性を有する領域が存在するのかも知れない。
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