平安京は、延暦13年(794)から明治2年(1869)までの日本の首都である。一千年のながきにわたって、日本社会・日本文化の主導的役割をはたしつづけてきた。にもかかわらず、平安京の研究は、けっして十分であったとはいいがたい。とりわけ、平安京の周辺地域についてはほとんどその研究はおこなわれていないといえる。本研究は、以下のような実績をあげることができた。 1.長岡京(784-794)は、"謎の都"ともいわれるように、遷都の経過・造営の過程・廃都の原因など、よくわかっていなかった。本研究においては、主として政治史の流れに注目することによって、ある程度それを明らかにすることができた。 2.平安遷都直後に推進された、平安京造営のありさまを具体的に解明した。 3.10世紀における平安京の変化は、「池亭記」に描写されてはいるが、きわめて文学的な表現であり、難解である。その内容を、歴史学の側面から明らかした。 4.鳥羽・白河といった郊外のニュータウンの展開のありさまを、近時の発掘調査の成果をとりいれて明らかにした。 5.平安京の都市としての側面を考えるために、市民階級の信仰である御霊信仰について分析を加えた。
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