本年度は前年度に導かれた数値解析モデルについて、特に不均一メッシュの位置の選択に対する計算時間の短縮の程度の検討と、各種のスイッチング条件を計算するメッシュの選択を一様にした場合と異なるメッシュを相互に接続して一連のスイッチングの計算をした場合の比較、さらにデバイスパラメータの演算の収束性に対する影響など、数理解析上の能率向上についてまず研究を行った。この結果、ターンオン時とターンオフ時のメッシュの配置を異なるものとすることにより、収束性と平滑性のよい解析が可能になり、特にターンオフ時の電流集中の状況がある程度正確に計算できるようになった。これにより局所的な損失分布が過渡的に与えられる。 素子特性の解析面では、ゲートターンオフサイリスタと静電誘導サイリスタのスイッチング特性の解析を相互に比較しながらすすめた。計算のベースは実素子のデータに依存しているので全く同一条件下とはいえないが、特にオン損失の面を中心に静電誘導サイリスタの温度上昇面での優位性が明らかになったが、電流のチャネル部への集中が激しいために、熱ストレスその他の点から信頼性上配慮すべき点は少くない。静電誘導サイリスタではむしろターンオン時の電流集中が激しいが、スイッチの方法が在来形の素子に比して十分に確立されていない点もあり、今後さらに検討を加えたい。 温度上昇のモデルは上で確立されたメッシュ構造と対応させて製作中であり、過度計算は次年度の課題となろう。また大形G-10サイリスタによる実験的な安全動作領域の評価についてはモデルコンバータユニットを作成している。計算手法との対応をとり、同時に限られた外部端子のデータを用いるための測定データの処理方式についても検討を加えている段階にある。
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