研究概要 |
コバルト(II)シッフ塩基錯体, Co^<II>(SB)は非プロトン性溶媒中でジオキシケナーゼ型反応活性を示す興味ある錯体であるが, 反応溶媒, 反応温度, 基質およびコバルト触媒の構造等に依存して一原子酸素化反応および脱水素反応をも触媒することを明らかにした. まず, 二原子酸素化反応において, フェノラート基質への二原子酸素導入反応で観測されるオルト位特異性は酸素取り込みステップに基質ラジカルが含まれない場合にのみ見られることを明らかにした. また, 脂肪族ニトロ化合物を配位飽和(HO)Co^<III>(SB)を用いて酸素酸化するとカルボニル化合物を生成することを見出した. 一方, 配位不飽和(HO)Co^<III>(SB)は一原子酸素化反応を触媒とすることがわかった. . 例えば芳香族ヒドラゾン, 脂肪族ニトロ化合物をメタノール中で酸素酸化すると基質C-C結合が開裂してカルボン酸メチルエステルを生成し, これは新しい型の酸化反応を提供している. さらに, スチレンは配位不飽和非平面(HO)Co^<III>(SB)を用いて2-プロパノール中60°Cで酸素酸化するとアセトフェノンと1-フェニルエタノールを生成する. この場合光学活性錯体を用いるとアルコールに不斉が導入される. 合成化学的に有用な新規脱水素反応も見出されており, 例えば(1)配位飽和(HO)Co^<III>(SB)を用いた芳香族ヒドラゾンを酸素酸化はジアゾ化合物の簡便合成法を提供しているし, (2)配位不飽和(HO)Co^<III>(SB)を用いて脂肪族ヒドラゾンを酸素酸化すると1-アルケニルコバルト錯体の新しい合成法となることも見出した. また(3)配位飽和(HO)Co^<III>(SB)存在下t-ブチルヒドロペルオキシドを酸化剤としてベンジルアルコール類を酸化すると高選択的に対応するベンスアルデヒドを生成することもわかった. 以上のように, 酸化反応に対して(HO)Co^<III>(SB)が重要であることがわかったが, この錯体の超酸および超塩基触媒作用も予見されるので, 今後これらについて研究する.
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