研究概要 |
1.家蚕幼虫にバクテリアを接種することにより、その体液中に4種以上の杭バクテリアタンパク質が誘導される。これらのうちの2種を単離し、BombytoxinA及びBと名付けた。これらは共に分子量約6000の塩基性タンパク質で、熱、酸及びアルカリに対して安定で、グラム陰性及び陽性の多種のバクテリアに非特異的に作用し、E,coliに対するその最低有効濃度は0,2ug/mlであったが、酵母に対しては全く作用を示さなかった。さらに、Bombytoxinよりも分子量の大きい抗バクテリアタンパク質2種が、バクテリアの感染後Bombytoxinよりも遅れて家蚕体液中に誘導されることを見い出した。これについては現在その精製を進めている。 2.この抗バクテリアタンパク質の誘導因となるバクテリアに種特異性は見られず、接種したグラム陰性及び陽性の12種のバクテリアのすべてが有効であった。また、沸とう水中で加熱殺菌したバクテリアでも有効であったが試験した5種の酵母、4種の糸状菌胞子及びガラスビーズはすべて無効であった。このことから誘導因となるものは、細菌細胞壁構成成分ではないかと考えられる。この誘導因物質を特定するため、細胞壁成分の分画を進めている。 3.Bombytoxinの作用を受けたE,coliの電子顕微鏡による観察の結果、細胞壁に損傷が認められ、この抗バクテリアタンパク質の第一次作用点は細胞壁であると考えられる。
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