研究概要 |
プロスタグランジン(PG)【F_2】αの選択的腫瘍血流減少反応を、ラット肝癌を用いて実験的に確認し、この機構の解明を試みた。 ラットは、日本ラット社ウィスター、週令28週を25匹用いた。この中の12匹はコントロールとして、また13匹は発癌剤として【3!´】-Me-DABを14週投与し、肝癌を作成し使用した。組織血流の測定は、電解式水素クリアランス法を用いた。薬剤は、左頚動脈からカテーテルを腹腔動脈に挿入して投与した。麻酔はウレタンを使用、呼吸は人工呼吸器にて管理した。正常肝組織の血流は、コントロール値103.1±32.9ml/min/100gであり、【PGF_2】の1μg/kg/minの投与にて96.1±32.1となり、両者間に統計学的に有意差を認めなかった。一方、肝癌組織の血流は、コントロール値が45.5±34.7,【PGF_2】α持続動注で22.0±15.0となり、腫瘍血流は有意に減少した。また、肝癌ラットにおける癌部と非癌部との比較においても同様の結果がえられた。次に、この【PGF_2】αの腫瘍血流減少反応とc-AMPとの関連をしらべた。肝癌組織血流のコントロール値が20.5±4.1,c-AMP2mg/kg/mlで持続動注すると19.8±3.8と変化がない。さらに、【PGF_2】αを投与すると19.1±3.8であった。c-AMPが【PGF_2】αの選択的腫瘍血流減少反応を阻止していることが明らかにされた。 以上の結果より、【PGF_2】αの腫瘍血流減少反応は、細胞レベル、つまり腫瘍細胞と血管内皮細胞間におけるc-AMP,Cdイオンなどセカンドメッセンジャーを介した相互作用によって惹起されると推定された。これは、腫瘍血管が正常血管のもつ自動調節能を欠くために起こるのか、或いは腫瘍血管が自動調節機構をもつために起こるのかは、今回の実験では明らかにされなかったが、今後検討する必要がある。
|