研究概要 |
レーザー低温顕微鏡の設計試作:He-Neレーザーを集光レンズおよび石英ステップ型光ファイバーによってNikonダイアホト-TMDの落射螢光照明装置開口部より細胞を照明し、ハーフミラーを通して明視野観察する。レーザー光のスペックルパターンの除去と照明均一化には周波数の異なる二つの振動の合成による光フアイバーのランダム振動方式で解決された。尚、試料ガラス裏面からの反射が干渉を起したが、試料ガラスの裏面を特殊コーティングすることで解決された。試料冷却装置は基本的に液体窒素ガス循環による冷却方式を採用し、チャンバー内に設けられる金属蒸着ガラスプレートを試料台とし、これに測温体からの信号をデジタル化しPID制御ならびにSCR駆動出力による微少電流を流すことで細かい温度制御が行われる。現在(3月19日)生細胞を用いて凍結下における観察の試験を行っている。61年度は、ビデオカメラおよび録画装置、そして画像計測システムをドッキングさせ種々の植物細胞を異なった条件下で観察し解析する予定となっている。 細胞凍死の機序に関する生化学的研究:植物細胞の凍死のメカニズムについて新知見が得られた(Plant Physiol,Vol80)。-7.5℃にしか耐えないキクイモの組織を-10℃まで凍結し細胞膜を分離し、脂質および蛋白質の組成を調べた。-10℃で凍結すると、細胞膜蛋白質のいくつかが分解消失した。このことは細胞の凍死と密接に関連し、短時間にみられることから、凍結によって細胞膜分子に引き起こされる生化学的変化の初期過程と考えられる。現在、これらの凍結に感受性の膜蛋白質を分離精製し、免疫抗体を作成し、プロトプラストを用い凍結融解の過程で細胞膜に起こる変化を分子レベルで追究する予定である。
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