研究概要 |
PCB,ダイオキシンなどによる環境災害の例が示すように、安定剤あるいは除草剤の成分として使用される難分解性の有機塩素化合物の環境における残留と生物体内の濃縮蓄積が、社会的な問題になり解決がせまられている。このような生物毒性物質は単一種の微生物によるよりも複数の菌の協同により効率的な分解が行われるものと考えられる。本研究は、有機塩素化合物の例として4-クロロビフェニル(4-CBP)を取りあげ、Arthrobacter M5株による4-CBPの4-クロロ安息香酸(4-CBA)への転換と、Pseudomonas aeruginosaによる4-CBAの脱塩素化ならびに無機化を連結して、PCBのモデル物質としての4-CBPの微生物分解に対する複数微生物の利用の効果について檢討した。 (1)β-シクロデキストリンを培地に添加し、90℃以上に加温しつつかきまぜ溶融した4-CBPをβ-シクロデキストリンを核として晶析させることにより、難溶解性の4-CBPを培地に均一に分散させることに成功し、4-CBPの生物分解速度を定量的に測定することを可能にした。 (2)β-シクロデキストリンの添加により、ArthrobacterとPseudomonasの協同作用に基づく4-CBPの脱塩素化が促進された。4-CBPの分散が良くなったため、基質の比表面積が増大したことに基づくものと解釈された。 (3)混合培養でPseudomonasの代謝産物によりArthrobacterの増殖が阻害される傾向があった。まずArthrobacterの純粋培養により4-CBPの4-CBAへの転換を進め、その後でPseudomonasを添加して4-CBAの脱塩素化を行わせる方式が、4-CBPを含む培地の中で両菌の同時混合培養を行う方式よりも脱塩素化効率の点で優っていた。 以上の如く、β-シクロデキストリンを添加する新しい固液二相系培養法を開発し、生物分解効率を高めた。
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