研究概要 |
1.光合成細菌及びチラコイド膜上での光エネルギー変換機構の解明を目ざして以下の様な研究を行なった. (1)光捕集の機構解明. 藻類のフィコビリゾーム・コアについて分子集合体の構造と機能との関係を考察した. 抗原抗体反応を用いて光合成細菌における光捕集系の蛋白質複合体の構造を明らかにした. ラマンスペクトルを用いてカロチノイドの存在状態を明らかにした. 光捕集系の蛋白質複合体の構造をX線回折法を用いて明らかにするため, 結晶化を試み, これに成功した. LB多層膜中に光合成用アンテナ色素を埋め込み生体系の機能の両現化を試みた. (2)電子伝達成分の役割の解明. プラストキノンの標準酸化電位を測定し, 電子伝達機構を考察した. 光合成系IIをサブ複合体へと解体し, それらを種々の組合せで両結合させてその機能を検討した. 各種の紅色光合成細菌を用いて電子供与体が固定型か移動型かの観点から考察した. 理論的に電子移動現象の説明を試み, 溶媒の両配向について新理論を提出した. ピコ秒分光法を用いて電子移動過程の解析を行なった. チトクロームb-C_1複合体からチトクロームb-562の単離精製に成功し, その性質を調べた. 植物の光化学系I中のビタミンK1の役割を詳しく追求した. 2.人工光合成系の構築およびシステム化を目ざして以下の様な研究を行なった. (1)合成分子による検討. 光誘起電子移動に関与する発色図を固定化して結合させた分子触媒の合成に成功した. 合成した分子触媒を二分子膜中へ組み込み, そのエネルギー変換機能を検討した. (2)多成分によるシステム化の検討. 水を酸化して酸素を発生する触媒を開発し, これを高分子膜および半導体と組合せてシステム化した. 単分子累積膜中に種々の分子を組み込んだ系を構築した. 両親媒性高分子電解質を用いて電子移動反応中心の封じ込め化をはかった. 高分子固体中でエネルギー移動を効率よく起す系および更に電子移動を起す系を組みたてた.
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