研究概要 |
本研究の目的は、政治過程における議会の機能を思想史的,政治史的,現状分析的に多角的に捉えることにあるが、61年度においてはこのうちの後二者のアプローチによる研究が比較的に進められた。共同研究集会と合宿では日本政治学会年報委員会メンバーのうち1987年度政治学年報執筆者による報告を中心として活発な討論が行なわれたが、その概要を日本の議会と外国の議会とに分けてまとめておくことにする。まず日本の議会については、政治史的アプローチをとる坂野報告「戦前日本の議会と政党」は征韓戦争以降日中戦争に至るまでの近代日本の議会の変遷を主として政党政治との関連から捉えようとした。また、現状分析的アプローチによる坂本報告「第102通常国会の審議日程」は、各委員会レベルまでブレークダウンした詳細な審議状況の分析を試みることによって、内閣提出法案の衆議院通過パターンの類型化を行なった。 さらにメンバー以外の研究者の参加による新たな知見の獲得例としては、佐藤誠三郎(東京大学教授)・松崎哲久(自民党総裁付)両氏を加えての自民党内の派閥・人事・政調部会での政策決定過程や国会における与野党の駈け引きの実態に関する討論、坂田道太(元衆議院議長)氏による「定数是正に関する法案審議の経緯」について、とくに議長の影響力と役割に関する討論、福田歓一(明治学院大学教授)氏の議会政と野党についての重要な問題提起をめぐる討論などがあるが、これらの知見は今年度の大きな収獲であった。 外国の議会については、高橋報告「20世紀初頭のイギリス議会」が戦前の歴史を扱ったほかは、犬童報告「戦前イギリス議会の位相」,平島報告「戦後西ドイツ議会政治の転換-大連合政権期」,阿部報告「大統領と議会」はいずれも対象を主に戦後に絞って各国議会の考察を行なった。
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