研究分担者 |
久武 哲也 甲南大学, 文学部, 助教授 (70108968)
小林 茂 九州大学, 教養部, 助教授 (30087150)
野沢 秀樹 九州大学, 文学部, 教授 (00036998)
米田 巌 広島大学, 総合科学部, 助教授 (90012533)
堀 信行 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40087143)
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研究概要 |
1.昨年度の研究集会での検討をふまえて, 本研究の二つのキーコンセプト(「生活空間組織」と「環境観」)について整理し, 視座を明確にした. これにそって進められた各研究分担者の研究は次のとおりである. 2.地理学思想史上, これらの鍵語と関係の深いヴィダル・ドゥ・ラ・ブラーシュの諸概念とそれをめぐる諸説を批判的に再検討し, その重要性を明確にした. 3.日本人の原初的な生活空間組織を環境観の関係を追求した. (1)沖縄, 奄美や瀬戸内海沿岸などの村落の空間的秩序の象徴的性格のなかにそれを見出した. (2)桜井市の遺構群の配置を道教思想によって解釈した. (3)外国人居留地との比較によって明らかにすることを試みた. 4.自然の制約がある地域の生活空間組織について次の諸点が明らかにされた. (1)透水性の高い阿蘇西麓の台地に発達した伝統的な潅漑水利大系に, 広い意味での社会組織や環境観が深くかかわっていた. (2)信濃川下流の低湿地に, 限られた空間から最大の収量をあげるために農民が編み出した巧みな生活空間組織があった. 5.人間の基礎的存在諸機能を充足する生活空間組織は, 行政その他の組織と重層構造をなし, 制約を受けるとともに境界が強化されることがあり, 時代とともに変化する. (1)焼畑時代に広い領域を行動範囲として組織していた山村は, 山が林業の場となってから機能の多様性を失った. (2)岩手県の旧藩境は現代でも明瞭に意識されている. (3)寺内町は宗教的な生活空間組織である. (4)死体処理と霊魂の供養に必要な空間である墓地をめぐって, 空間に対する認識とその利用形態の関係の変遷を調べた.
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