研究概要 |
「ツォンカパの仏教思想の総合的研究」の目的は, 14世紀に在世したチベット仏教の学僧ツォンカパの思想を解明することであった. ツォンカパは, チベット仏教1200年の歴史において, 最も偉大な学僧であり, チベット仏教を学問的に高レベルに確立した宗教改革者でもある. すなわち, かれは, チベット仏教を学問面と実践面と両面から体系づけたのである. チベット仏教を究明するためには, ツォンカパの思想に対する解明が大前提であり, それなくしてチベット仏教の究明は全く不可能であると言っても過言ではない. このツォンカパの仏教思想を総合的に研究しようとしたのが今回の研究である. 研究代表者による「ツォンカパの中観思想の研究」はチャンドラキールティの『入中論』に対するかれの注釈書「意趣善明」の解読研究の完了により大半は, 目的を達成したといえる. 今後は, これに基いた解釈の問題に入ることになろう. 研究分担者(片野道雄)による「ツォンカパの唯識思想の研究」は片野は以前からこの問題に取り組み, ツォンカパの『了義未了義論"善説心髄"』の解説研究を続けている. すでに学会誌などにおいて幾つかの成果が発表されているが, この研究班による研究成果もそれに続いて発表されていくであろう. 研究分担者(小谷信千代)による「ツォンカパの伝記の研究」は, すでに『アーラヤ識とマナ識の研究』(1986年)として公刊され本研究によってそれに続く研究が行われている. 研究分担者(一郷正道)による「ツォンカパと後期インド仏教」は本研究によってスタートした研究であり, 目下資料の解読中である. いずれその成果が発表されていくであろう.
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