研究概要 |
1)牛馬の混牧と牧畑の利用ー放牧地と畑地との輪換利用である牧畑は, 対馬・隠岐など日本海沿岸の島しょに存在し, その北限は新潟県の粟島であることを確認した. 1m以下の浅雪地域においては, 馬が周年放牧されており, 春から秋にかけては牛は混牧されている. また牧畑における耕起には犁が用いられるなど, 焼き畑に比較してはるかに集約的である. 牧畑農業は牛馬の卓越する畜産地帯に存在するが, 農業生産力はあまり高くなく, 自給目的に穀物や芋類を生産するために, 牧畑を造成し, 家畜の厩肥によって地力を培養している. 牧畑耕作は日本の青潮文化地域ばかりでなく, 韓国の済州島にも存在し, さらに朝鮮半島にもあったことを文献により確認した. 2)北方からの狩猟・漁〓文化ー北方からのリマン海流は, 冬季になると, 佐渡沖20〜30マイルに接近し, 青潮道は海面下50mで潮目をつくる. この境の海水温が7℃である. リマン海流に乗って, トドが南下し, 佐渡や能登半島まで達している. 能登沖の七ッ島では, 銃によるトド漁が明治時代まで営まれていた. また「止め川」による河川におけるサケ漁は, アイヌ民族のウライの系譜をくむものである. 3)東北アジアからの文化伝播ーカンジキ・古代スキーなどの雪上歩行具は, シベリアのツングースなどの少数民族の文化である. また干鮭, ルイベ, 昆布, 刺身などは, アイヌなどの北方民族の食文化が, わが国に伝えられたものである. 中世, 東北地方北部は, 日本における牛馬生産の先進地であった. ここでの種畜は, 韃靼といわれた東北アジアから輸入されていた. 日本海沿岸の文化複合には, 青潮文化のみではなく, 北からのリマン海流文化を考慮しなければならない.
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