研究概要 |
誘電絶縁体中に電荷が蓄積されることはよく知られているが、その電荷分布および電荷量を測定する技術はこれまで本格的開発はない。その理由は、【i】広帯域高感度圧電センサの特性が不十分であること,【ii】測定系の非線形性に起因する信号波形歪をデコンボリューションする技術も不十分であること。そこで本研究の目的はこの二つの技術を開発することにより、固体誘電体中の電荷分布測定を可能にすることにある。【i】広帯域高感度圧電センサの開発:周波数帯域が20Mzぐらいまでの圧電センサが必要である。この周波数帯域をカバーできるのは、高分子PVDF圧電センサと、セラミックのPZTがあるが、現在のところ後者のPZT圧電センサが良好である。 【ii】データ処理系の開発:圧電センサからの信号を、今回講入した広帯域アンプで増幅し、ディジタイジング・オシロスコープのメモリーに取り扱みその後GP-IB結線によりマイクロ・コンピュータにデータを移す。その後の測定系(電極,試料,圧電センサ)の非線形特性を補正するためのデコンボリューション・データ処理技術は一応の完成をみた。この完成に到るまでには、電極,試料,圧電センサの個々の伝達関数を測定し、その後それ等の組み立て系の伝達関数の検討を行い、一応実用できる伝達関数を決めることができた。 現在、数枚のプラスチック絶縁板に電子線照射をした試料について、電荷分布の測定を試みている。やはり分解能の良い電荷分布測定を可能にするためには、広帯域高感度圧電センサの開発が必要である。
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