研究概要 |
1.ジ-2-ピリジルケトン(dpk)錯体の合成。[Ru【(bpy)_2】(dpk](【CLO_4】)を合成し、そのキャラクテリゼーションを行なった。これに関連し2次元NMR法により'Hおよび【^BC】NMRのスペクトルを完全に帰属することができた。電気化学的測定により、【Ru^(III)】/【Ru^(II)】について、E1/2=-1.20V(25℃、アセトントリル溶媒,Ag/Agcl【O_4】 0.1mol【dm^(-3)】基準)の値を得た、これは【Ru^(II)】のビピリジン,ジ-2-ピリジルアミン錯体に比して大きく正電位側にシフトし、dpk配位子の還元されやすさを示すものと推論した。なおこの他の【Ru^(II)】-dpk 錯体合成の出発物質となりうる【[Ru(OH)_2(dpk)_2]^+】塩を合成した。 2.【[Ru(bpy)_n(Hdpa)_(3-n)]^(2+)】(Hdpa=ジ-2-ピリジルアミン)の光学分割【[Ru(Hdpa)_3]^(2+)】はカラムクロマトグラフィーおよびジベンゾイルーレ-酒石酸ナトリウム(【Na_2】dbt)とのジアステレオマー沈殿法によって光学分割を行ない、両法からΔΕの値が一致する光学異性体が得られた。また【[Ru(bpy)_2(Hdpa)_2]^(2+)】はジアステレオマー沈殿法、【[Ru(bpy)_2(Hdpa)]^(2+)】はクロマトグラフ法によりそれぞれ光学分割することができた。 3.【[Ru(Hdpa)_3]^(2+)】の光ラセミ化反応 水溶液の超高圧水銀燈による照射を行ないラセミ化の量子収率を測定し、照射光の波長,温度,酸素の存在等の効果をしらべた。一例として360nmの光による照射におけるラセミ化の量子収率(Φ)はΦ/10=3.81(40℃),7.38(50℃),8.91(60℃),9.87(70℃)となった。これらの値は【[Ru(bpy)_3]^(2+)】,【[Ru(phen)_3]^(2+)】、のそれと比べて約1/10と小さく、【[Ru(Hdpa)_3]^(2+)】の発光スペクトルが観測されないことと関連して、励起状態の寿命が上記2種の錯体に比して短かいと推論される。 なお以上の研究と関連して、cis-[Ru【cl_2】【(Hdpa)_2】]Cl・【H_2】Oの合成を行い、その構造をX線解析法により決定した。
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