研究課題/領域番号 |
61480067
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
若林 久嗣 東大, 農学部, 教授 (00011932)
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研究分担者 |
飯田 貴次 東京大学, 農学部, 助手 (70159557)
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キーワード | 魚類 / ウナギ / 生体防禦 / 補体 / 好中球 / 代替経路 / オプソニン作用 / 貧食 / 遊走 / 密度勾配分画法 / 化学発光法 / ボイデン法 |
研究概要 |
細菌等の感染に対する魚の初期防御の機序を解明することを目的とし、とくに補体および好中球の機能を中心に検討した。 補体の代替経路を活性化させる意図で新鮮血清にホルマリン不活化細菌(死菌と呼ぶ)あるいはザイモザンを加えたのち再分離したウナギ血清(処理血清と呼ぶ)の好中球遊走活性をボイデン法で調べたところ処理血清は未処理血清より有意に高い活性が認められた。処理血清をウナギに腹腔内注射したところ腹腔内への遊走細胞の浸潤と血液中の好中球の増加が起こった。また、新鮮血清と混合ののち再分離した死菌に対する好中球の貧食能を化学発光によって調べたところ、処理菌体は対照と比べ有意に好中球に取込まれ、オプソニン作用が認められた。このように、ウナギ補体には食細胞の働きを助ける種々の働きのあることが明らかになった。 処理血清を腹腔内注射し、血液中の好中球数を経時的に測定したところ、そのピークは接種6〜9時間後であった。カゼインを接種した場合も同様であった。一方、死菌を接種した場合は接種12〜15時間後に、菌体破壊液の場合は接種15〜18時間後に、ピークがあり、それらの高さは前2者の2〜3倍であった。死菌を接種したウナギの血液を密度勾配法で分画したところ好中球は3分画に分れたが、最も比重の大きい分画は対照魚、処理血清接種魚、カゼイン接種魚には認められず、形態的にもやや大型でPASに強く染るなどの特徴が見られた。このように細菌または細菌由来物質は他の異物の刺激によって増員される好中球より時間的に遅れて出現する特異な好中球の産生を刺激すると推察されることから、細菌の侵入を認知し、それを伝達する因子の解明と増生の場の探求が今後の課題と考えられる。なお、好中球産生の場所と考えられる腎臓の組織のホモジネートには菌体接種魚の場合も比重の小さい好中球しか認められなかった。
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