研究概要 |
1987年1月から12月の1年間に, 鹿児島県内各地から計53例の先天異常子牛が収集された. 品種別ではホルスタイン種5例以外は黒毛和種であり, 性別では雄62%, 雌36%となった. 出生地は曽於群19例, 姶良郡13例, 薩摩郡10例, 日置郡6例, 伊佐郡4例, 大島郡1例となった. 出生月の分布では, 1985年12月から1986年12月にかけては少なく4例のみで, 1987年1月から5月は計29例(55%)と過半を占めた. 6月から12月は毎月2〜5例が継続的に発生した. 産歴では初産が9例(17%)とやや多かったが, 2産から10産にかけても各2〜6例の発生があった. 器官系統別の分類では, 複合異常が25例(47%)含まれたため, その総数は98例となった. すなわち, 骨格系20例, 関節2例, 関節弯曲症11例, 中枢神経系13例, 眼系3例, 心奇形15例, 消化器系4例, 腎異常3例, 反転性裂体1例, ヘルニア2例, 潛伏精巣と間性8例, 二重体3例, 虚弱12例, 早死産1例となった. 骨格系の異常には種々なタイプがみられたが, 単発は1例のみで, 他はすべて合併異常を伴っていた. 関節弯曲症11例では単発は4例で, 年間を通して発生がみられた. 中枢神経系の単発は4例で, うちChuzan Virus推測異常は4月生れの1例のみで, アカバネ病の明白な発生は皆無であった. 心奇形15例のうち11例は他と合併していた. 虚弱12例は出生時に哺乳困難や起立不能を示し, 後に発育不良となったもので肉眼的な病変は示されなかった. 実験的に, ラットの妊娠中期と授乳期に, 各種用量のクロルテトラサイクリンと鉛を投与して, 胎子と新生子への影響を観察した. その結果, クロルテトラサイクリンと鉛はともに, 高用量では胎子致死作用を示すが, 両者の併用によるその増強効果は認められず, 本実験の範因内では奇形発現の可能性も少ないことが判明した.
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