研究概要 |
昨年度は主にCa依存性のKチャネルの性質を分析したが, 本年度はこのチャネルに対するpHの影響を家兎の気管平滑筋を用いて調べると共に, 家兎の大動脈およびブタの冠動脈の平滑筋を用いてCaチャネルについての分析も試みた. Ca依存性のKチャネルは酸性にすると抑えられ, アルカリ性にすると開確率が上昇するが, これはCaに対するチャネルの親和性がアルカリの方で増加するためである. また, 酸性の影響は膜を過分極させる程強く現われ, また細胞内K濃度が細胞外より低いほど著明であった. この作用はチャネルの開閉を制御している蛋白分子のCaに対する親和性がpHや膜電位によって変化するためと考えられる. Caチャネルについては細胞膜全体を流れる電流を, いわゆるwholeーcell clampの状態で記録した. これらの平滑筋細胞におけるCa電流は膜電位を-80mVに保持していても, -30mVに脱分極した状態に保っていても殆んど同じであるので, 脱分極による不活性化を受け難いL型のCaチャネルを介したものが主であるといえる. つまり, この平滑筋にはT型チャネルの存在は少なく, これは恐らく, 電気的興奮性が低いことと関係しているものと考えられる. これらのCa電流は時間と共に減弱(runーdown)する傾向が強いが, 細胞によっては10分程度の分析に耐えるものもあり, 現在のところこれらの差が何によるのか不明である. 電極先端が細いため電極内溶液中のATPやEGTAなどが充分な速度で細胞内へ拡散しないのが原因である可能性もあるが, 今後検討する必要がある. 大部分の細胞はカテコルアミンに対して明確な反応を示さないが, 中にはα受容体を介して膜電位依存性のCa電流を著明に増加させるものが存在することが明らかとなった. 今まで受容体を介したCaの流入は膜電位依存性のCaチャネルと別の機構を介していると考えられているが, 今回の結果はこの点で興味があり, 今後さらに詳しく分析する予定である.
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