研究概要 |
遺伝子産物の組織化学は急速な進展をきたすと注目されたが,その陽性所見の厳格な評価は,これまで,十分な合意を得ていなかった.Hーras蛋白p21の抗体が正常組織でも陽性所見を示すことを数年来発表してきたが,正常組織の抽出物で,Westernーblot法,Northern法で具体的に明らかにした.同様の結果はいくつかの研究所でも指適され,同抗体が癌組織のみで陽性を示すわけでないことが広く認められるようになった.正常胃,腎,肝等でもHーrasの発現がみられ,特に脳で強く発現していた.合成peptideを抗原とする抗ablモノクローナル抗体の作製については,3側でtyrosin kinase活性に関連する部分のDNA塩基配列をもとに14peptideを合成し,モノクローナル抗体を作製した.2000クローンのhybridomaからELISA法によるスクリーニングの結果7種を選択した.免疫グロブリンサブクラスはIgG2aで,Westernーblot,免疫組織染色で抗体の評価を行った.K562白血病細胞抽出液ではP210にバンドがえられ,免疫染色では膜に局在した.in vivo,in vitroリン酸化反応でもablに対する抗体であることを示す結果がえられた.一方,パラフィン包埋ブロックからのDNA抽出では,低分子化する機序を明らかにするため,基礎研究を行った.そして,ホルマリン固定が徐々に進行し,その間のDNaseが作用して低分子化がおこることを明らかにした.パラフィン包埋の状態で長年月保存しても收量に差はなく,低分子化した状態で保存されているためにすぎない.成人T細胞白血病にみられるHTLVーIをモデルにホルマリン固定に伴う変化と検出条件を検討した.以上のように,検索を詳細に行ない,いくつかの成果をあげたが,更に広い範囲での病理組織材料について遺伝子解析を行う.
|