研究概要 |
原発性肺癌は, たとえ治癒切除が施行出来たと考えられた症例でも, 術後局所再発または遠隔転移の可能性は半数以上あり, このことは肺癌外科療法に併用する合併療法の必要性と妥当性を示している. もし, 宿主に自家肺癌細胞に対する障害活性をもつリンパ球が存在するのならば腫瘍負荷との関連性化学療法剤の影響, 免疫療法剤による増強及びその特異性等の検索は担癌宿主の集学的治療を施行する際に明らかにしておかなければならない基礎的課題の1つである. 本研究では,原発性肺癌切除例の原発巣より自家肺癌細胞を培養し, これを標的細胞として肺癌症例の末梢血リンパ球の細胞障害活性を術後経時的に測定した. 自家腫瘍細胞に対する細胞障課活性は, 術後1〜2週では年令, 性別, 組織型, 病期並びに, 手術根治度による差はみられなかったが, この値と術後4〜5週を比較したところ, 治癒切除例では有意に低下したのに対して頃治癒切除例では高値を維持した. そのEffectorはモノクローナル抗体及びCold competitionから腫瘍特異的Tリンパ球であることが明らかとなった. また, この1〜2週における細胞障害活性は術後2〜3年経過観察中における転移再発と相関性がみられた. 即ち, 低下例に有意に高い術後再発転移を認めた. 以上より, 肺癌切除例においても腫瘍随伴免疫に存在している可能性を示唆する成績を得た. 術後CDDP及びVDSによる制癌剤投与はこの細胞障害活性を推計学的に有意に抑制しなかったがin vitroにおけるinter-leukin 2によるKillerの誘導は明らかに低下した. これらの成績は肺癌切除例における術後adjuvant化学療法を施行する際, 十分留意すべき点と考えられる. 術後BRMによる合併療法の意義は腫瘍随伴免疫を維持増強することにより再発転移を抑制することにあるものと考えている.
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