研究概要 |
日本列島周辺に分布する海底堆積物の特徴を明らかにする目的で2年間に亘って以下のような調査・研究を進めて来た. 1.陸源・火山源物質の供給源となっている陸上の地質調査(対馬, 伊豆七島, 伊豆半島, 大槌湾周辺, 八ヶ岳). また同時に陸上地形図から河川水系図と水系区分部の作製. これらは陸源物質が海岸まで削剥運搬される過程を明らかにする目的で行われた. 2.海洋地質調査:東大海洋研究所の淡青丸, 白鳳丸, 弥生による海底地質調査:御蔵・入丈海盆, ヤップ島周辺, 相模湾, 大槌湾の堆積物や岩石の採集. これら以外に「しんかい2000」による御蔵海盆の潜水, 日仏海溝計画で「ノチール」によって行われた潜航調査の結果の再吟味も行った. 3.室内実験:上記の調査によって採集された堆積物や岩石の中に含まれる陸源・火山源物質の顕微鏡観察や磁気的性質の測定を行った. 以上のことから次のような結果が得られた. 陸源物質は水系図や水系区分図からその供給源をいくつかに区分出来る. 運搬過程については河川の流路を構成する地質体により大きく支配されることが大槌湾とその周辺の河川堆積物から明らかになった. 海域では海底谷系の分布に大きく支配されて最終点である堆積盆へと運搬され堆積する. 海底堆積物のうち陸源物質は後背地からの水系・海底谷系に強く依存するため陸上の地質体の特徴がその中によく保存されている. 島弧-海溝系の周辺の海底堆積物は陸源・火山源, 生物源, 自成, 風成のものが複雑に混合したものであるが堆積盆を構成する堆積物の特徴はその地理的位置に強く支配される. 安定大陸や日本列島から削剥運搬される陸源物質(T), 島弧-海溝系の火山活動の産物である火山源物質(V), 黒潮や親潮の運搬する生物源物質(B)の3つの要素が基本的に重要であり, T, V, Bの三要素の比が堆積盆の特徴を知る指標となることが明らかになった.
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