研究概要 |
日本列島周辺に分布する海底堆積物の諸性質をまとめるために今年度は以下のような調査・研究を行った. [陸源・火山源物質の供給源である陸上地質帯の調査]. これは日本列島西端の対島, 伊豆・小笠原の大島, 新島, 神津島, 八丈島, 式根島, 島孤会合部のヤップ島及び天然の実験室である大槌湾である. 対馬は日本海の成因と関連する重要な地域で15Ma頃に日本海が拡大してその後大陸と日本列島の中間に位置していることが明らかとなった. 七島の島々は, 島孤起源の火山性堆積物の形成と運搬を考える上で重要で, 伊豆・小笠原孤飯谷に多量の火山性物質を数Maに亘って供給しつづけて来た. ヤップ島では50Ma頃の海洋地殼そのものが陸化し, それが削剥されて周辺の海底に運搬されたらしいことが明らかとなった. 大槌湾では, 河川の削剥と堆積物の運搬が, 後背地の地質体と極めてよい相関を持って行なわれていることが明らかになった. [陸上水系図と水系区分]陸上の地質調査と平行して日本列島全域の水系図を50万分の1地形図を基本にして作製した. この水系図の作製は精度はやや粗いが日本列島の大雑把な水系区, すなわち陸源物質の削剥・運搬過程を眺め, 陸源物質の運搬系路区を作製するのに大いに役立った. すなわち海底堆積物によって形成される堆積盆の特徴を知るためにその起源となった堆積区をいくつかに区分することが出来た. また現在の海底谷の分布図を作製中であるが, これと陸上水系区から, 陸源堆積物の削剥・運搬・堆積のすべての過程のルート図を編むことが出来, それぞれの堆積盆を埋める陸源物質の特徴をまとめることが出来る. 本年度の結果は主として陸源物質についての予察的なまとめが出来たが, 前年度に行った火山源物質のまとめとあわせて, 今後, より定量的な精度の高い島孤ー海溝系周辺の堆積盆を形成する海底堆積物の区分とその成因に関する研究が完成するものと思われる.
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