研究課題/領域番号 |
61490015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山梨 正明 京都大学, 教養部, 助教授 (80107086)
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研究分担者 |
吉川 左紀子 追手門学院大学, 文学部, 講師 (40158407)
辻井 潤一 京都大学, 工学部, 助教授 (20026313)
清水 御代明 京都大学, 文学部, 教授 (20031669)
長尾 真 京都大学, 工学部, 教授 (30025960)
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キーワード | ソース言語 / ターゲット言語 / ピボット方式 / プロトタイプ / 認知のスキーマ / 意味構造 / スキーマ変換 |
研究概要 |
これまでの翻訳のプロセスの研究は、文学作品の翻訳を中心とする文化論的な考察が主流を占めており、ソース言語とターゲット言語の二言語間の文法構造と意味構造にどのような対応関係があるのか、また翻訳文の読みやすさや解釈の難易度をどのように評価するかといった問題にかかわる実際の翻訳の認知的プロセスの具体に関する実証的な研究は本格的にはなされていない。 本研究では、日本語と英語の間の翻訳にみられる誤訳・難解訳データを、言語学・心理学・情報処理の観点から解析プロセスに基づいて分析し、二言語間の語彙体系と文法体系・意味体系の相違による誤訳・難解訳の認知プロセスの具体を明らかにした。特に本年度の研究では、次の点を明らかにした。 1.誤訳・難解訳をひき起こす要因は、従来から指摘されているような文法構造の相違だけでなく、語彙体系の背後にある言語文化的な知識のギャプがその重要な要因となる。 2.二言語間の翻訳プロセスの具体をみる限りでは、従来の二言語の共有する普遍意味構造を媒介とするピボット方式の翻訳は、人間の翻訳プロセスとしては強すぎる。 3.従来のモノ的・コト的な構文に基づく翻訳の方略には限界がある。実際の翻訳のプロセスには、二言語間のテクストを特徴づける認知のスキーマの変換が重要な役割をになう。 以上の知見を踏まえ、次年度の研究では、とくに二言語間の(1)テクスト・談話の慨念構造のズレ、(2)言語対象の背景的知識のズレに焦点を置き、認知プロセスの観点からみた誤訳と難解訳の原因のプロトタイプの抽出とスキーマの変換の明確化を試みる。
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