1.ブレオマイシンによるDNA切断反応の真の活性種を同定するため、ブレオマイシン-鉄錯体およびモデル合成プペチド-鉄錯体と分子状酸素あるいは過酸化水素との反応を低温ラピッドスキャン電子スピン共鳴法を駆使して追究した結果、鉄(w)-過酸化錯体種を直接検出することに成功し、この活性酸素種が真のDNA切断活性種であることを明らかにした。 2.ブレオマイシン-鉄錯体とチトクロームP-450との類似点・相異点を明確にするため、各種分光学的諸定数およびシス又はトランス-スチルベンのエポキシ化反応の両面から検討した。その結果、両者の酸素の活性化機構は極めて類似しているものの、Fe(【IV】)=O種はブレオマイシン-鉄錯体系では存在しないこと等、若干の相異も認められた。また、スチルベンのエポキシ化反応において、ブレオマイシン-鉄錯体系はチトクロームP-450系と同様、シス-スチルベンに対してのみ高い反応性を示し、基質に対する立体特異性をもらした。しかし、単純なモデルペプチド-鉄錯体系は、シスおよびトランス-スチルベンに対してほぼ同じような反応性を示した。 3.ブレオマイシン遷移金属錯体のDNA切断反応におけるグアニン-ピリミジン塩基配列特異性の分子機構を解明するため、DNA相互作用部位と考えられるビチアゾール基の修飾を計画し、金属ブレオマイシンへの紫外線照射によって選択的にビチアゾール基を変換させることに成功した。液体クロマトグラフィーで単離・精製した光変換ブレオマイシンを用いて、プラスミドpBR322やファージφΧ174由来の200〜400塩基対のDNAフラグメントの切断塩基配列地図を作製した。その結果、ビチアゾール基のN-C-C-N骨格部位がDNA塩基配列の認識に重要な役割をはたしている可能性が高いことがわかった。
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