研究概要 |
「交付申請書」では、(1)基本感情の数調べと(2)感情の定義と記号化と(3)笑いのメカニズム解明という3つの目的を挙げたが、2年計画のうちの初年度である本年は、そのうちの前2つの目的をめぐって集中的に研究を行ない、次頁の雑誌論文に示す通り、かなりの程度まで成果を上げ得たと思う。「本年度の研究実施計画」【I】〜【IV】のうち、【I】-1と【I】-2の絵画スライドセットと音楽テープの購入を終わり、実験の計画中である。【II】の小説からの感情表現場面の抽出を終え、筆者の行なった各感情の定義がどの程度まで妥当するかを分析中である。【III】の笑いについては、目下実験を通じて計量心理学的に研究中で成果は日心大会(62年度)に発表を申し込んである。【IV】の感情の心理学的研究を行なっておられる研究者(戸田氏と浜氏)との交流の道は、本年度の出張によって開かれることになった。研究によって得られた「新たな知見と成果」とを以下に記す:感情は、ウッドワース・シュロスバーグらの有名な円環構造から誤解される様な、2基本感情から合成されるという単純なものではなく、6〜8ケの基本感情から合成されるものではないか、ということが1つの結論である。このことより詳細な実証のためには、通常の因子分析法ではなく、既に因子分析法の発展史の上からは消え去ろうとしている。ガットマンのラデックス法という特殊な因子分析法を用いた感情の実験的研究が、日本人を被験者として必要不可欠であるが、これは日本では成されたことがなく、目下筆者が実験と解析の最中である。感情の定義とその記号化は、梅原猛論文(1972)に基づいて、その考えを改良発展させ、人間工学会と日心大会で発表し、梅原氏をはじめとする多くの人達からの好評を得ている。要するに、驚き,喜びなど14種類の感情を、梅原よりは論理的に、定義に基づいて記号化し、感情相互の類似性と反対性を論じ、要素間の関係についても考察を加えることが出来た。
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