研究概要 |
公職追放は占領史上きわめて重要な位置を占めているにもかかわらず、殆ど未研究状態にある。そこで初年度では戦後日本に決定的な影響を及ぼした公職追放令(SCAPIN-550&548)の形成・決定過程に焦点を紋り研究を進めた。ここ1ヵ年の研究結果では所期の目的を達成できた。以下、研究方法,資料収集状況,論文作成そして解明された内容について報告する。まず国会図書館にてパージ文書(マイクロフィッシュ約1.600枚)をコピーし、追放政策文書を抽出する作業を3ヵ月行なった。しかしこれはGHQ民政局の文書のため、米国政府内部における公職追放の構想を解明する必要が生じた。そこで米英両国への資料調査旅行を吉田国際教育財団の援助により8月に実施した。その結果SWNCC(国務陸海三省調整委員会)やJCS(統合参謀本部)等の追放関係文書を収集できた。また英国公文書館(PRO)の資料は同盟国として米国の対日占領政策を示唆しており意外な成果があった。さらに元GS公職追放課長ネーピアにインタービューできたことも貴重であった。帰国後日本国際政治学会機関誌掲載論文の執筆に取り掛かった。論文では、(1)国務省およびSWNCCでの公職追放の構想過程、(2)マッカーサ総司令部の追放計画とJCS1380文書指令に基づく公職追放政策の形成・決定過程、(3)追放指令への日本政府の対応と公職追放令の施行過程を順次明らかにした。そして米国政府の構想段階から日本政府の実施段階に至る過程での様々な政策主体(機関)と、それら政策主体間の政治的抗争,政策目標の変化,日独両国間でのパージの比較的相違などを考察できた。次年度ではこの成果を踏まえて、公職追放令の拡大過程と具体的に政治問題化したパージの事例を研究する予定である。
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