3次元時空間上でのフエルミ場の理論における一般的な低エネルギー定理の証明がなされ、それの応用として強磁場下での非相対論的な電子系での量子ホール効果における、ホール伝導度の量子化の厳密性が示された。ホール伝導度のトポロジカルな性質、即ち、これが3次元運動量空間から、2点関数空間一の写像の巻き数であること、が明らかにされ、これを使って前記の証明がなされた。この証明に使われているのは、電流演算子の量子力学的な保存則であり、これは一般的に成立する関係式であるため、不純物の存在、相互作用の存在等のもとでも適用しうる。 2点関数の性質は一体状態が局在しているか、または拡がっているかにより大きく異なる。この違いがトポロジカルな量に与える影響も明らかにされいわゆる伝導度がプラトーを持つことが局在と対応していることが、場の量子論的な計算のもとでも確められた。そこでの伝導度の値の量子化が、相互作用があるときにも成立することが厳密に示された。以上の計算は実時間量子論としての成果である。 有限温度下での平衡状態に対するホール伝導度の量子化についても、同様のことが示された。有限温度下では一体波動関数の局在は必らずしも必要ではなく、平衡状態であるというだけで十分である。 以上のように実験で得られている結果の厳密性が示されたので、量子ホール効果からの結果を使い、量子電気力学(QED)のテストがなされ得るものである。
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