研究概要 |
ハドロンのカイラル非線型シグマ模型を基礎とするスカーム模型に関する研究がなされた。一つはソリトン解としてのスカーミオンとπ中間子との相互作用に関するものであり、もう一つはスカーミオン-スカーミオン間の相互作用としての核力(核子-Δ粒子を含む)に関するものである。 スカーミオン-π中間子系の研究では、まず古典的ソリトン解にカイラル変換を行ないΠ中間子場で展開するいわゆるカイラル摂動論を展開し、スカーミオンのゆらぎとしてπ中間子場を導入する。ここで回転と平行移動に附随するゼロ・モードが現われる。このπ中間子-スカーミオン系に対して、Gervais-Jevicki-Sakitaの方法を用いることにより、ゼロ・モードを正当に考慮に入れて量子化の手続きを進めることが可能となる。π中間子-核子散乱のグリーン関数が求められ、核子の反跳やΔ粒子への遷移を考慮に入れた取り扱いも出来ることになった。 核力に関する研究については、まずスカーミオンについて微分が6次まで、すなわち、バリオンとオメガ中間子との結合までが考慮される。π-π散乱との整合性をとるために、4次の微分項では対称なものも考慮する。具体的に採用されたパラメータではこの項はスカーミオンの不安定性をもたらすことはない。結果として核子-核子,核子-Δ粒子間のポテンシアルがスピン,アイソスピンの各状態について求められた。OBEポテンシアルとの比較により、核子間距離が離れたところ(2f以上)ではπ,Ρ中間子交換力と良く合っていることが判る。対称4次の項は引力的中心力を出すと期待されたが、オメガ中間子結合との関係で得られないことが判った。 スカーミオンに変形の自由度を考慮すると、スカーミオン間距離が接近したところで、核子-核子で円盤状,核子-反核子で葉巻型にスカーミオンが変形するという興味ある結果も得られた。
|