実験I.ブドウの幼木相の短縮(1)培養技術を用いて各種植物ホルモンの発芽後の生長に対する作用性を調査した。ベンジルアデニンは崩芽促進に、合成オーキシンであるNAAは発根促進に効果が認められた。しかし、ジベレリンは他の植物にみられる崩芽促進や節数の増加作用などは認められなかった。ABAは生長抑制作用を示した。(2)ブドウの種子は、通常完熟後崩芽するまでに2〜3か月の湿潤低温処理が必要である。 前年の研究により、この胚の休眠を覚醒するのに核を除去し、胚乳を胚につけたままで培養すると発芽促進効果が認められた。この胚乳中の未知の休眠覚醒物質の性質を明らかにするため継続して実験を進めた。その結果、この物質は核除去後3時間ほどで胚乳内で作られ胚に移動すること、低温では合成されないこと、合成には酵素が必要であることなどが明らかとなった。(3)培養技術を用いて休眠打破し、生長促進を行った培養個体を自然条件下に順化させる技術を検討した。先ず、発育中の実生を2芽で切断し、BAを処理し、崩芽を促す。次いで、NAAを処理し発根を促す。NAA処理後10日程してから、無菌のバーミキュライトに移植し、湿度制御をしながら発芽・発根を助長する。この条件で、80〜90%の実生を順化させることに成功した。 実験II.開花するのに長期間の幼木相を必要とするカンキツ類を用いて、翌春花芽誘導が期待される樹と、誘導されない樹の葉内のタンパク質の電気泳動装置による泳動パターンを調査した。その結果、500キロダルトン付近のバンドに著しい差異が認められた。また、ジベレリンを処理すると、一旦誘導された花芽を栄養芽に変える作用があるが、この際もやはり、上記のタンパク質のバンドが無処理と比べて極めて薄くなった。
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