研究概要 |
安曇野を特微づける自然条件の一つに、湧き出て盡きることを知らない、多く湧水がある。これらの湧水は古来、生活用水や農業用水として人々に親しみ利用されて来た。すぐれた自然は人知によって、ますます育成強化されなければならない。しかるに、近代化はこの優れた自然風土を踏台にして、のし上ることがある。安曇野の湧水群も今受難の時をむかえているので、その維持・管理システムの確立が急がれる。 1.対象流域は梓川、高瀬川、穂高川(鳥川、黒沢川)等の複合扇状地であって、そこを流れる地下水は複雑な様相を呈するので、流域末端における湧水量の年変化を実測によって明らかにした。実測結果によれば7月に最大値、2月に最小値が出現する。そしてmax./min≒2となった。浅層地下水の湧水が含まれている事を予想させる。 2.流域末端の15haからの湧水量は全体で約1.8【m^3】/secであるが、湧水温は場所によって大きく違っている。すなわち、水温をトレーサーと考えれば湧水は、それぞれ異なった経路をたどった地下水の複合である。 3.対象流域内の地下水位の季節変動を、観測井のデーターや既設の井戸(民家)を利用して明らかにした。これによれば、流域末端部の地下水位は、年間を通じてほゞ不変(地表面下約1.2m)であるのに対し、梓川,穂高川近傍の地下水位変動は、末端からの湧水量変動特性と同じ様な変動をする。主な影響河川の推定がほゞ可能となった。 4.湧水域の微細気象環境を計測することによって、湧水の環境調節作用を、ある程度明らかにした。 5.湧水の水質分析によって、湧水が水田耕地からも大量に補給されていることを明らかにした。
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