研究概要 |
微生物のもつコレステロールに対する生理活性を、本年度は特にコレステロールの分解および吸着という点から探索して、以下に示すような成果を得た。ヒト,および牛,豚,山羊,鶏などの糞便ならびにチーズ,発酵乳などの乳製品中に上記の活性を示す乳酸菌と酵母(乳製品においては食品有用のカビも)生存している事を認め、それらの株の分離を試みた。食品有用微生物という観点からみると、コレステロールの分解には乳酸菌が、その吸着には乳酸菌、酵母とカビが関与している場合が多いと判り、現在これらの株の単離・同定を行っている。さらに発酵乳より分離した株(末同定であるがCandida属に入ると予想)が、菌体外にコレステロール吸着物質を産生していると認められた。大量培養して得た培養濾液より吸着物質を単離したところ、それは酸性多糖類(グルコースを主体とする多糖類で粒子量が100万以上のもの)であるという結果を得た。この物質は1mgにつきコレステロールを1mg程度吸着する活性を有した。酸性糖の種類、グルコースの結合の様式およびコレステロールの吸着機構の解明につき検討続けている。一方、コレステロールの分解についても、従来より分離・同定して使用してきたRhodo-coccus equi No.23の産生する酵素の諸性質の解析ならびに畜産食品への応用といった点からも検討している。コレステロールの分解でまず第一に関与する酵素はコレステロールオキシダーゼであり、これを精製して諸性質を調べた。分子量56,000、至適pH7.7、50℃まで安定、至適温度47℃、km値0.9mMで、塩基性のチオール酵素であると明らかにした。さらには、分離中である微生物のコレステロールの分解酵素も同様に単離し、性質の解明に努めている。畜産食品への応用については、上記のNo.23の株もしくはその産生する酵素溶液を用いて卵黄コレステロールの低減化も検討し、成果を得ているところである。
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