畜産食品にはコレステロール含有量が多いという問題点がある。健全な畜産食品の発展を願って、酪農用微生物をはじめとする食品関連微生物の潜在的能力を発堀し、コレステロール問題を解決する事を目的として研究を行った。1.畜産食品に対するコレステロール低減化剤としての微生物およびその酵素の利用:食品、糞便をはじめとする天然物より数多くのコレステロール分解細菌を分離した。分解活性の強い株のほとんどはRhodococcus属に属した。バターより分離したR.equi No.23は特に分解活性の強いものであった。この株を用いて卵黄およびラード中のコレステロールの分解に成功した。卵黄中のコレステロールは主として低密度リポタンパク質を構成しているため、大半のコレステロールを分解するに際し、リン脂質の一部を分解する必要があった。ラード中ではコレステロールは遊離の状態で存在しているため、効果的に分解し得た。さらに、株によっては細菌そのものの利用ではなく、培養口液を用いてコレステロールを分解し得る株も存在した。上記のR.equi No.23もその株の一つであり、その培養3液、すなわち菌体外酵素溶液を用いて前述の食品中のコレステロールの分解にも成功した。また、コレステロール分解の第一ステップに関与する酵素、コレステロールオキシダーゼを精製し、その酵素的諸性質を明らかにした。2.微生物の産生するコレステロール吸着性物質の解析:水不溶性のコレステロールを吸着して可溶性とする物質を産生する微生物を探索し、酵母としてCandida kefyr、C.tenuis、細菌としてRhodococcus bronchialis、Bacillus sp.およびArthrobacter sp.を分離・同定した。これらの活性物質の主体は、各株共通して酸性多糖であった。その構成単糖は株によって異なっていた。R.bronchialisからのものはウロン酸20%と中性糖(グルコース:ガラクトース=4:1)80%とで構成されていた。
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