研究概要 |
初期培養肝細胞をestrogen,testosteroneの17β-glucuronideあるいはpregnane,3α,20β-diolの存在下で培養すると、ethynylestradiol誘起の肝内胆汁うっ滞に類似した胆汁酸動態,細胞中の5'-Nase活性,CAMP量の低下およびAlP活性,エステル型コレステロールの増加が認められた。また、この様な培養細胞に各種うっ滞治療薬を添加培養すると、上述の因子は対照レベルに回復することからこの実験系は薬効検定に適用出来ることをすでに報告している。 本年度はこの胆汁うっ滞機構を検討し、次の結論を得た。(1)これらステロイドが小胞体およびペルオキシゾームの機能低下を誘導し、胆汁酸代謝におけるalternative pathwayの亢進により生合成されたリトコール酸が毛細胆管膜等に障害を与え、膜透過性の低下、CAMP依存性の【Na^+】,【K^+】-ATPase活性の低下を生じる。(2)このうっ滞におけるデキサメタゾン(Dex)の効果は、前述のうっ滞誘起ステロイドの小胞体への親和性を弱め、その解離を促進したり、ジブチルCAMP添加により同様な効果が得られることから、胆汁酸代謝に関与する酵素が脱リン酸化されて不活化されているのをリン酸化して活性型に変換することが推察される。今後、これら胆汁うっ滞誘起ステロイドの細胞内諸器官への局在性等を検討し、この機構をより明らかにしたいと考えている。 一方、四塩化炭素による障害培養肝細胞に対するグリチルリチン(GL)の効果を胆汁酸動態,肝特異酵素(GOT,GPT,glutathione-transferase)の漏出抑制効果から検討し、GLによる抑制効果にはviableな細胞数が残存し、かつ肝予備態がある程度保持されている事が必要であった。また、ガラクトサミン障害肝細胞においてはミトコンドリアの機能異常を示すglycerol-3-phosphate dehydrogenase活性の上昇をプロトポルフィリンが抑制する事がわかった。今後、これらの細胞障害性薬剤による障害機構を肝細胞膜の変化から、あるいは組織化学的に検討したいと考えている。
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