研究概要 |
すでに私達はestradiol-17β-glucuroride(E_2-17G)誘起の肝内胆汁うっ帯モデルをラットの初代培養肝細胞系を用いて作成し, 副腎皮質ホルモン剤, フェルバルビタール等の薬効評価への応用を可能にしたり, 四塩化炭素誘起による障害培養肝細胞に対してグリチルリン(GL), プロトポルフィリン(PP)はその肝毒性を軽減すること等を報告している. 本年度はこれらの事をさらに検討, 発展させて次の様な結論を得た. (1)初代培養細胞密度が高い場合には, PPによるチトクロームP-450の誘導がみられるが, 低細雨密度では誘導されない事から, これら薬剤による防禦機構にはviableな細胞数および肝予備能がある程度保持されていることが必要である. (2)分離直後の肝細胞にE2-17Gを投与しても, 肝内胆汁うっ帯は誘起されないが, デキサメサゾン(dex)で4時間前処理後では誘起されることから, 分離肝細胞からの毛細胆管形成が必要であり, dexにはその形成を促進する可能性が示唆された. (3)培養肝細胞にcalcium ionophore A23187を添加すると, 終濃度3μMで細胞内のCa含量は対照に比較して約2倍上昇すると共に, 培養液中へのGPT漏出が認められた. この様な細胞に, GLおよびPPを添加すると, 両薬剤の添加量に応じてその抑制効果が認められた. (4)コラーゲンでコーティングした培養皿上のラット初代培養肝細胞に癌原物質を投与して不定期DNA合成量を測定すると, behz(x) pyrene(10-5M), aflatoxinB1(10-4M)および3′-methyl-4-dimethylaminoazobenzene(10-4M)ではその合成量が対照に比較して約2〜3倍増加した. また, この癌原物質によるDNA損傷をうけている肝細胞にPPおよびGLを投与すると, その合成量が低下し, 特にグルタチオンおよびアスコルビン酸共存下で顕著であることから, これら両薬剤はfree radicalスカペンジャー的作用を有すると推察され, 今後核DNA分子中へのDNA adduct形成との関係を検討したいと考えている.
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