研究概要 |
肺小細胞癌同一症例の原発巣・転移リンパ節・正常リンパ節から別個に計4種類の培養細胞株を樹立した。これら細胞株の細胞膜抗原の解析により、正常リンパ節から樹立した1株(PCN17-C)はB細胞由来と判明した。他の3株(PCN17-a,b,d)は電顕的特徴から小細胞癌株であることが裏付けられた。HLA抗原に関してこのB細胞株がAw24,Aw33,Bw44,B40,Cw3,DRw12,DRw13,DRw52,DQw1,DQw3陽性であるのに対して肺癌株はB40のみ陽性で、DR抗原陰性であった。この肺癌株を免疫原として小細胞癌に特異性の高い単クローン性抗体を作製中である。またこの肺癌株のヌードマウスへの移植を試ているが生着し難いため、免疫抑制剤や放射線照射の併用を計画している。 小細胞癌切除例の組識切片に対して既存の単クローン性抗体(抗サイトケラチン,抗ビメンチン,抗ニューロフィラメント等)を用いた免疫組識化学によりGazdarらの提唱した組識亜型別に抗原分布を調べると、variant typeとpleomor phic typeの一部では上皮様形態を示す部分が抗サイトケラチン抗体(PKK1)によって染色されたが、classic typeでは染色されず組識亜型と抗原分布にやや相関を認めた。しかし特定のtypeと高率に反応する単クローン性抗体は検索した範囲には存在しなかった。一方、原発巣と転移巣の間の抗原性の異同を同一の方法で調べると、原発巣で抗原が存在したにもかかわらず転移巣では脱落していると考えられた例が、検索した10例のうち、NSE4例,CEA2例,S100蛋白1例について認められた。これが抗原変調を意味し、小細胞癌の高い転移能や症例の予後と関連を有するか否か、さらに症例を増やして検討を加える予定である。
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