研究概要 |
種々の肺癌関連抗原に対する単クローン性抗体を用いて, 小細胞癌及び非小細胞癌培養細胞の膜表面抗原を解析した. 本来, 単球系細胞の有するLeu7抗原に関して, 小細胞癌4株中の3株に検出し得たが, 非小細胞癌では, 大細胞癌由来の1株を除き全く検出されず, 小細胞癌にかなり特異的であった. EMA(epithelial membrane antigen)と, CEAは腺癌株に陽性率が高く, 抗原によっては組織型間で発現に差があった. 同様にEGF受容器は小細胞癌株には認められなかったが, 腺癌株PC3と扁平上皮癌株PC10には高濃度に発現しており, 癌細胞増殖機構とのかかわりが示唆された. 小細胞癌に特異性の高い単クローン性抗体NCC-LU-243抗体を用いてヌードマウスに移植した小細胞癌株H69の増殖阻止を検討した. 腫瘍径約5mmの小さな腫瘍に対しては2.5mg/ml濃度の抗体を0.2mlづつ5日間腫瘍内注入を行ったところ, 完全退縮が観察されたが, 同量の抗体の腹腔内投与では抗腫瘍効果は認められなかった. 腫瘍径が2cm以上に大きくなると, 腫瘍内注入によっても増殖阻止は観察されず, 治療を目的とした抗体使用に際しては, 単独投与による場合は著しく高濃度の抗体を必要とし, 抗体と制癌剤もしくは放射性物質との結合物投与が望ましいと考えられた. In vitroにおいて, 肺癌患者末梢血リンパ球とNCC-LU-243抗体を用いて肺小細胞癌株を標的細胞としたADCC活性を測定したところ, 対照と比較して有意の活性上昇は認められなかった. 今後, 各種BRMとの併用による抗腫瘍効果を検討してゆく予定である.
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