研究概要 |
癌患者末梢血リンパ球を効果細胞、肺小細胞癌培養細胞を標的細胞としてNCC-Lu-243抗体を用いたADCC活性を種々の条件下で測定した。20時間反応群は4時間反応群と比較して活性値が高く、また効果細胞をIL2と共に前培養してから用いると抗体低濃度域で若干の活性上昇を認めた。効果細胞をあらかじめ抗体と共に前培養してからADCC活性を測定すると症例によっては著明な活性上昇を認めた。 ヌードマウスに移植したヒト肺小細胞癌増殖阻止能をNCC-Lu-243抗体のマウス腹腔内投与により検討したところ、2.5mgの抗体を8回にわたり投与すると腫瘍体積が300mm^3よりも小さい時は増殖が阻止されたが、それ以上大きい時は増殖抑制効果は確認されなかった。 NCC-Lu-243抗体と抗癌剤ダウノマイシンとの結合物を作製し、その抗腫瘍効果をin vitro及びin vivoで検討した。肺小細胞癌培地中に抗癌剤・抗体結合物を添加したところ対照と比較して増殖抑制が観察されたが、抗癌剤単独の抑制効果よりも弱く今後、抗癌剤の種類、結合方法などを検討してゆく必要があると考えられる。 マウス単クローン性抗体投与による毒性を検索するために、5mg/kgの比較的大量のNCC-Lu-243抗体をカニクイザルに投与して経時的に採血し生化学的異常の有無を調べた。一週間隔で3回の抗体投与を行ったが、アナフィラキシーショックをはじめとする重篤なアレルギー症状は観察されなかった。肝機能はGOT,GPT,LDHが一過性に上昇したのち正常値に復した。ALP,γ-GTPの胆道系酵素は上昇後回復がやや遅延する傾向があった。腎機能はクレアチニンとBUNがわずかに上昇したが明らかな異常値ではなかった。
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