研究概要 |
(1)各種の単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)をマウス角膜に接種して病変の形成と比較した。標準HSV-1:CH【R_3】株,F株,弱毒HSV-1:KOS株,Ska株,巨細胞形成HSV-1:Mp株をBALB/Cマウスの角膜に接種後経時的に細隙灯顕微鏡下で観察し、角膜病変の出現頻度をみた。接種後7日目の眼球、涙腺、三叉神経節のウイルス力価を調べた。その結果、CH【R_3】株が最も実質混濁を伴う樹枝状角膜炎の出現頻度が高かった。一方、KOS株,Ska株では角膜病変はおこりにくかった。また、Ska株を部分精製し力価を上げて接種しても病変はつくりにくかった。(2)角膜ヘルペスの感染防禦と実質性病変の形成には、ともに細胞性免疫が主要因となっていると考えられている。そこでリンパ球を分画し、これらの細胞が角膜ヘルペスの感染防禦と実質性病変の形成にはたす役割を検討した。マウスの球結膜下にCH【R_3】株を接種して7日目の局所リンパ節と脾臓から得たリンパ球について、抗Thy1・2,抗Lyt2・2,抗L3T4 抗体+補体処理を行い、これらの細胞をヌードマウスに養子移入し、CH【R_3】株を角膜に接種して、各分画の働きを調べた。その結果、以下のことがわかった。【i】)局所リンパ節細胞の方が脾細胞よりも10倍以上有効にウイルスの拡がりを防ぐ。【ii】)L3T4分画よりもLyt2分画の方がウイルスの拡がりを強くおさえる。【iii】)L3T4分画にもウイルス増殖阻止能力がある。【iv】)リンパ球とin vivoで培養しuv不活化ウイルスを加えて活性化した場合は、L3T4分画に強い阻止能力がみられる。【v】)角膜実質への細胞浸潤はそれぞれのT細胞分画を移入したときの方が分画していないリンパ球を移入したときよりも軽度である。(3)角膜ヘルペス患者から分離されたHSV-1 60株についてDNA finger printing patternの解析を行っているが、病型との関連性の有無については今後の課題である。
|