研究概要 |
象牙質知覚過敏症の処置とし、抜髄や薬物塗布が行われているが、患者の負担、効果の不確実さ等の問題が残されている。近年、簡便で効果的な治療方法として半導体レーザーを歯牙に照射する試みがなされているが、その作用機序については不明な点が多く、適応症の選択や照射条件は確立されていない。そこで今回、1.レーザー照射後の歯髄組織の変化を病理組織学的に検索し、その作用機序を解明する。2.臨床での治療効果を精査し、適応症の決定と治療効果を高める要因を見出す。ために以下の実験を行った。 1.雄のウィスター系ラットの上下顎第1大臼歯、計14本にGa-Al-As半導体レーザー(波長830nm,出力30mW)を60秒,90秒間連続照射し、術後2週目に屠殺した。通法に従い病理切片を作成し、未照射群と比較しながら光顕下にて観察を行った。 2.本学附属病院に通院中の象牙質知覚過敏を有する患者の了解のもとに臨床成績カードに従ってレーザーを照射し、臨床経過の観察を行った。 結果 1.今回の条件ではレーザー照射群の歯髄には組織学的な変化は見出せなかった。今後、照射条件を変え、電顕レベルでの観察を行うとともに、局所血流量の変化の測定や、酵素学的な研究など違った角度からのアプローチも必要と思われる。また、矯正的便宜抜去予定歯や抜去予定歯などのヒト永久歯で、すでに照射を行った歯牙については抜歯を予定している。 2.症例数は少ないが、象牙質知覚過敏症に対する有効性と即効性が認められている。しかし、無効例や再発例もみられることからも今後さらに症例数をふやし、より治療効果の高い照射条件を検討せねばならない。
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