研究概要 |
血小板活性化因子(PAF)は, 1-アルキルー2-アセチルーsn-グリセロー3-ホスホコリンの構造を持つリン脂質メディエーターであり, 微量で様々な生理活性を示す. 生体内での血圧の恒常性やアナフィラキシー, 炎症反応等でPAFが作用している可能性が示唆されているが, 簡便で再現性のある微量定量法がないため, 未だ生体内反応における真の重要性は明らかにされていないのが現状であった. 従来PAFの定量はおもに生物学的方法は試料の血小板活性化能を測定するもので, 検出限界(10^<-13>モル)は低いが, 活性化させずに血小板を調製することが難しく, 再現性に問題がある. 一方質量分析法は検出限界(2×10^<-11>モル)が高く, 質量分析計が必要である. 我々はコリンアセチルトランスフェラーゼ活性の測定法をコリンの微量定量に応用し, 簡便で再現性よく10^<-11>モルのPAFを定量できる測定系を構築した. すなわち試料中の脂質からHPLCでPAF画分を分離後, ホスホリパーゼD処理で得たコリンを[^3H]-アセチルCoA存在下コリンアセチルトランスフェラーゼで[^3H]-アセチルコリンとし, 抽出後放射活性を測定する. 様々な条件検討を行った結果, ホスホリパーゼDはストレプトマイセスクロモホスカス由来の部分精製酵素, コリンアセチルトランスフェラーゼはヒト胎盤より部分精製酵素を用いることで感度を向上させた. 反応液量を15μlとし, ホスホリパーゼD, [^3H]-アセチルCoA, コリンアセチルトランスフェラーゼを同時に加え6時間で定量できるようにした. アセチルコリンの抽出に用いる溶媒混合比を変えて感度を向上させた. この新しい酵素的定量法を応用し, マクロファージ様細胞株J774.1をA23187刺激した際にPAFの産生及び放出が起こることを示した. またカゼイン投与で誘導したラット腹腔侵出液中に多量のPAFを検出した.
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