研究概要 |
研究計画に従って以下の研究を実施し、成果を得た。 1.新たな温度感受性変異株細胞の分離については、まず増殖に関して温度感受性の表現型を示す変異株を、従来からのものを含めて計400以上分離した。これらのなかから本研究の目的であるGO期移行型変異株およびGO期脱出型変異株の有無を検討し、前者について数株を得た(発表1)。後者については新たな株を得るに至らなかった。 2.既に得られているGO期脱出型変異細胞のうち、tsJT60細胞について解析した。変異遺伝子の機能する細胞周期上の時点はGO期脱出から9時間(S期の3時間前)まで連続的であると推定された。従来の変異株では、連続的でなく一時点であることと考えあわせると本細胞のひとつの特徴である。また、タンパク合成,RNA合成については、増殖刺激後に通常認められる合成誘導が、非許容温度では抑制されていた(以上発表2)。 3.tsJT60細胞について、増殖誘導後の細胞周期依存的な10種のmRNAの発現について調べた結果,許容,非許容温度ともに、親株である3Y1細胞とほとんど差がなかった。非許容温度で発現のみられなかったのは、ヒストンmRNAのみであるが、これは同温度ではtsJT60細胞がS期に入れないこととよく符号する(発表3)。 4.myc,ras等の遺伝子導入によるトランスホーム細胞が温度感受性表現型をどのように修飾されるかについては、目下細胞をクローニング中である。(関連発表4) 5.今後、更に新たな変異株細胞の分離を続行すると同時に、今年度は特にtsJT60細胞の変異機能を相補する正常ヒト遺伝子のクローニングを集中的に進める予定である。
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