研究概要 |
T.Nishimoto & C.Basilico(1978)がシリアンハムスター細胞(BHK21)より分離した温度感受性変異株(tsミュータント)を用いてX線照射後の非許容温度下でのインキュベート(40℃、3時間)の影響を調べた。これまで9株のミュータントについて検討したが、tsBN2株(染色体凝縮制御機構が温度感受性で、40℃下では細胞周期に関係なく染色体凝縮-PCC-が起きる)で著しい致死促進効果が認められた。 この現象の機構を明らかにするために、61年度計画にもとづき研究を行い、次のような知見を得た。 1.この現象はX線のような電離放射線に特有であり、UVでは見られない。 2.X線照射から40℃インキュベート開始までの時間を遅らせると致死促進効果は小さくなり、12時間以上では無くなる。 これは40℃インキュベートによりPLD(潜在致死損傷)が発現していることを示唆する。 3.PCC誘導を阻害する蛋白阻害剤(サイクロヘキシミド)を40℃インキュベート中に加えておくと致死促進効果が抑制される。 これは染色体凝縮に伴うDNA・クロマチン構造の変化がPLDの発現に関与していることを示唆する。 4.同調細胞を用いた実験より、late【G_2】-M以外の周期で40℃インキュベートの致死促進効果が認められた。 これは、許容温度(33.5℃)下で染色体凝縮が起きているlate【G_2】-Mでは、すでにPLDが発現しているからであり、この期の細胞のX線高感受性の原因もそこにあると考えられる。 以上の結果をまとめた論文はRadlat.Res.3月号に掲載予定である。 なお現在、PLD発現を促進するその他の因子(不等張溶液,カフェイン)との比較を行っており、第8回国際放射線会議(8th ICRR、1987年7月、エジンバラ)で発表する予定であり、準備を進めている。
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