研究概要 |
二年計画の初年度にあたる本年度は、小・中・高の各学年にわたる帰国子女約40例について、自由表出法に基く世界像の検出調査を実施した。現在、結果の分析を急いでいるが、ほぼ次の結果が明らかになりつつある。 |)滞在期間と共に、在留国の治安状態とも関連するが、概して、小学校中・高学年に渡航したものは、当該地域についての地域認識が適確であり、単なる基礎世界像の充実にどどまらず、当該国の副極化がみられる場合が多い。これは、探検行動期における渡航が効果的に作用したためとも言えるが、帰国後にも及ぶ、当該国の友人達との交流を含む積極的友情報行動による刺激が地域認識の強化をもたらしたとみることができる。 この「地域認識に関する結晶作用」とも言うべき副極化の過程,動機,メカニズムについての分析は、次年度の課題の一つである。なお、この様な現象は、米国,西欧諸国など、ヨーロッパ文化の卓越する地域について顕著なことは活目に価する。 2)特に前期の渡航時における場合、世界像形成の背後をなす歴史的時間軸が不明確な場合が多いが、これは第三世界の場合に、顕著である。 すなわち、国内で生活する通常の小・中・高生が、ごく日常的に備えている日本史に関する流れが、世界像における歴史的時間軸の物指として利用することが容易でない。滞在国の歴史については、確かに一定の認識があるが、それを歴史的時間軸として、世界像に組み込めるほど確かなものとはなり難い。 この様なことは、とくに世界史像の形成に際しても著しくマイナス面をもたらしていることがうかがえ、今後、日本人学校の地理教育カリキュラムにおける歴史教材とのかかわりで、さらに研究すべきテーマといえる。
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