研究分担者 |
横田 茂 関西大学, 商学部, 教授 (80067686)
小林 昭 金沢大学, 経済学部, 教授 (20019326)
戒能 通厚 名古屋大学, 法学部, 教授 (00013011)
宮本 憲一 大阪市立大学, 商学部, 教授 (30046891)
丹羽 邦男 神奈川大学, 経済学部, 教授 (10078272)
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研究概要 |
今年度は, わが国土地税制の歴史的沿革と改革方向を諸外国の実例を参考としながら明らかにした. 土地税制の三類型を個別に見ると, まず, 保有課税では, 法的地価とのギャップにより農村の地主に重い負担の地租が現在では固定資産税として受けつがれ, その適性化が農地の宅地並課税の問題として現われている. 一般に保有コストの引き上げは是とするが, 個人の営業権と生存権への配慮が求められよう. さらに, 住民のニーズが高いアメニティを実現するために緑の保全を図る観点も重要である. 関東ではそのための基金をもつ自治体が見られるが, 関西ではこれからの課題である. 次に譲渡所得課税は戦後, 売却した場合に所得税や住民税・事業税によって対応され, 保有期間の長短の区別が問題とされたが, 今後は適性な価格を上回る超過利益への課税の徹底を図る必要があろう. 諸外国では, イギリスと台湾の土地増価税が有名であるが, 前者は1964年に導入した一般的なキャピタルゲイン税との結合が, 後者は地価台帳と個人別保有台帳のコンピュータ化が注目されるベきである. 流通課税では, 今日の地価高騰(とりわけ大都市部でのそれ)の影響を受けた相続税が問題となっている. 富の不平等の是正を図るあまり, 生存権を否定してはなるまい. 結局のところ, 今日の地方財政を土地税制のみで賄うことは不可能となっているので, 土地利用計画や都市計画をも活用しながら, 土地投機を防ぎつつ, 土地をその地域の自然や伝統と調和した形で活用する道を模索してゆかねばならない. そのために土地税制はいかにあるベきかが今後の重要な課題である. 土地の資本価値, すなわち, 将来予想しうる収益を考慮にいれた価値への課税は, 土地の最高最善の利用を前提としているのであるが, その評価主体, 評価方法とともに興味深い. 次年度は, 実証分析を通じてこのことを明らかにしようと考えている.
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