研究概要 |
情動に伴って視床下部および自律神経活動は変化する. 今後は情動に関係ある内在性物質の脳室内や血中投与により視床下部や自律神経活がどのように変化するのかを比較検討した. 川村は視床下部腹内側核両側破壊の後, 過食状態を示した成体ラット脳内に胎仔VMHを含む視床下部組織を移殖し, 摂食量の機能回復をみた. 小野は学習行動下サル扁桃体から, 単一ニューロン活動を記録し, 感覚と快・不快情動の連合を推察した. 堀はサルの視束前野から, 温度ニューロンの単一活動を記録し,報酬獲得に伴う情動反応への体温の関連を示唆した. 大村は免疫関連物質として知られているインターロイキンβ(ITLーβ)の脳室内投与により摂食抑制を起こすこと, この抑制は満腹中枢と摂食中枢のニューロン活動の変化によって起こることを発見した. 新島はまたITLーβが脾臓神経や副腎神経活動への促進効果を観察した. 小野田は視・聴覚の発達の悪い生後間もない幼若ラットをもちいて, 情動行動発現に対して嗅覚入力がどのような役割を果たしているのかを単一ニューロンレベルで解析した. 山下は視床下部の浸透圧ニューロンにインスリン, グルカゴン, バソプレシン, ANPを与えて作用機序を明らかにした. 中川はラットの第III脳室に種々のペプチドを投与し, 情動行動の変化を観察した. 矢内原と酒井は種々のペピチドやプロスタグランディン, 有機酸などの組織内局在, 生合成過程や検出機序について研究し, 木村はこれら物質の内在性本能行動発現因子としての役割を明確にした.
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