研究概要 |
ギャップ結合細胞間連絡は分子量1000以下の生理活性物質の自由な細胞間移動による接触細胞間の情報交換を意味し,細胞分化増殖や分泌の調節に重要な役割を果たしている。本研究では,膜中のチャネルであるギャップ結合蛋白質の分離,精製とその抗体作製から,それを応用して細胞間連絡の多様な生理機能を明らかにすることが主要な目的である。 ラット肝臓より分離精製した分子量27Kのギャップ結合蛋白質に対するモノクロ-ナル抗体を作製し,以下の研究成果を挙げた。 1.)ラット肝臓27Kギャップ結合蛋白質に対する四種のモノクロ-ナル抗体産生細胞株を樹立した。得たモノクロ-ナル抗体はすべてIgGタイプで,肝凍結切片でギャップ結合を免疫組織化学的に染色した。 2.)抗体価の高いモノクロ-ナル抗体の認識部位を検索した所,酵素消化による27Kギャップ結合蛋白質の分解産物のいずれのものにも結合しなかった。モノクロ-ナル抗体は,27K蛋白質の高次構造を認識している可能性が高い。 3.)マウス受精卵,初期胚及び顎下腺腺房細胞内に抗体と蛍光色素を注入した所,蛍光色素の細胞間移動は影響されなかった。抗体のギャップ結合から機能抑制に至る過程は,反応時間が必要なものと考えられ,抗体注入細胞の標識方法から注入技術等の改善を試みている。 4.)マウス顎下腺腺房細胞は,肝臓27Kギャップ結合蛋白質に対するモノクロ-ナル抗体で組織染色され,かつ細胞膜分画内にもモノクロ-ナル抗体を反応する27K蛋白質の存在がイムノブロット法で示された事より肝臓ギャップ結合蛋白質と同種の蛋白質で唾液腺腺房細胞間ギャップ結合が構成されていると考えられる。 以上モノクロ-ナル抗体を用いて各種細胞でのギャップ結合構成蛋白質とその機能について検索した。
|