研究概要 |
(I).ヒト骨肉腫ヌードマウス移植株10株における細胞性癌遺伝子の存続と転写を検索した. 16種類(cーHーras,vーKーras,Nーras,cーmyc,Nーmycvーmyb,vーyes,vーfps,vーabl,vーfms,Cーerb Bー1,cーerb Bー2,vーmos,vーraf,vーsis,sーfos)のクローン化癌遺伝子をプローベとしたSouthern blot hybridization E Northern blot hybridizationより解析し次の結果を得た. (1)cーmyc遺伝子の増幅を1株において認めた. (2)cーmyc m RNAは4株で, CーHーras m RNAは4株で, dーfos m RNAは1株で検出した. (3)cーmyc m RNAの転写が検出された移植株では, ヌードマウスにおける腫瘍増殖性が高い傾向を示した. (II)ヒト骨肉腫の肺転移における癌遺伝子の関与を検索した. ヌードマウス皮下移植で50%の自然肺転移率を示すヒト骨肉腫TANI株の肺転移巣をヌードマウス皮下に移植して, 肺転移率80%のTANIー26ーM2株を樹立した. 両株からm RNAを精製し, cーHーras,vーKーras,cーmyc,Nーmyc,vーmyb,cーfos,vーsis,cーerb Bー1,vーfmsの各クローン化癌遺伝子をプローベとして, 両株における癌遺伝子の転写をNorthern blot hybridization法で解析した. cーfos m RNAの転写レベルは, TANIー26ーM2株ではTANI株の約5倍であり, 転写量の増加と高肺転移率との関連性が示唆された. (III)大腿骨発生ヒト骨肉腫を免疫原として4E11, ヒト大腿骨傍骨性骨肉腫由来の培養細胞株から2H10,2D3のモノクローナル抗体を作製した. 4E11はヒト骨肉腫8例中7例と反応すると同時に, 悪性線維性組織球腫, 骨巨細胞腫とも反応した. 一方, 2H10,2D3は骨肉腫8例全例と反応し, 他の骨軟部腫瘍・上皮系腫瘍との反応はみられなかった. 生化学的検索より, 2H10,2D3は分子量75kdの同一抗原分子上の異なる抗原決定基を認識していた. これらの抗体は骨肉腫関連抗原の血清診断に有用なことを示唆していた.
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